大判例

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東京高等裁判所 昭和61年(ネ)2977号 判決

まず、控訴人由人及び同吉子の請求についてみると、右控訴人らは、小平市福祉事務所長が本件不措置決定をし、かつ、その代替措置がとられなかったことにより、右控訴人らに生じた保育費用の負担の増加分について損害賠償を求めている。しかしながら、<児童福祉>法二四条が市町村長(法三二条二項の規定によりこれらの者から権限の委任を受けた福祉事務所の長を含む。以下同じ。)の保育所入所措置等の義務について定めているのが専ら児童自身の健全な育成を図るためであることは、同法の趣旨に照らして明らかであるところ、児童の保護者は、国及び地方公共団体と並んで児童の保育の責任を負い(法二条参照)、右責任の負担について国及び地方公共団体に劣後するものとは到底いえないから、当然その費用をも負担すべきものであり、自らの経済的負担の軽減を図る見地から市町村長に対し法二四条による措置をとることを要求することのできる立場にあるものではない。したがって、仮に市町村長が右措置を懈怠したことによって児童の保護者が保育費用の全額を負担せざるを得なくなったとしても、右懈怠は保護者の財産的法益を違法に侵害するものであるということはできず、また、逆に右措置がとられることによって保護者が保育費用の一部の負担を免れることがあっても、それは右措置に伴う反射的利益にすぎない。児童福祉法施行規則一九条二項によれば、その監護すべき児童につき法二四条による保育所入所措置を受けさせることを希望する者は市町村長にその旨の申請をしなければならないと定められているが、この規定も、その文理から見て、対象者が乳・幼児又はこれに準ずる者であって自ら申請することは望めないことから、その監護義務者の義務遂行の一環としての申請権限を定めたものにすぎないものと解され、上記の解釈を左右するに足りない。以上の次第であるから、小平市長又は小平市福祉事務所長が法二四条所定の措置をとるべき義務を懈怠した結果、控訴人由人及び同吉子の保育費用の負担が増加したとしても、被控訴人は右負担増加分についての損害賠償義務を負うものではない。

(丹野 加茂 新城)

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